2024年6月に「食料・農業・農村基本法」が改正され、われわれの社会における農業の役割が再定義されました。この改正では、「食料安全保障の確保」、「環境と調和のとれた食料システムの構築」、「人口減少における農業生産の維持・発展と農村地域コミュニティの維持」が、新たな基本方針の柱として位置付けられました。
さらに、2025年4月には「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」が新たに公表されました。新酪肉近では、生乳生産目標数量を現行水準の732万トンと掲げ、輸入飼料に過度に頼らない酪農経営を目指すとしながら、飼料自給率は28%とこれも現状とほぼ変わらない目標が設定されました。この目標数量の評価は様々ですが、食料安全保障の確保というならば、より生産者目線での目標であって欲しかったと考えます。
米国ではトランプ政権が誕生し、関税をめぐる動きは不確定要素が大きく、景気後退による消費の減少等の影響が懸念される所です。しかしながら、2025年6月から加工向け乳価引き上げ、8月からは飲用向け乳価の引き上げが決定しており、生産者の皆様にとっては明るい話題であり、未来への一歩につながるのではないかと感じております。
2025年5月、雪印メグミルクグループは創業100周年を迎えると同時に、私たち酪農総合研究所は創立50周年を迎えます。これまで築き上げられた伝統と知識を次世代に受け継ぎながら、酪総研創立時に掲げた「酪農による健土健民の理想の実現」をさらなる高みに導き続ける所存です。
今後ともグループ各社や関係機関との連携を深め、持続可能な酪農経営のサポートに尽力するとともに、酪農生産基盤の維持・強化のための調査研究や経営分析等の取り組みを推進していきますので、酪農乳業関係者の皆様方のご指導、ご鞭撻を心よりよろしくお願い申し上げます。
2025年4月