シンポジウム

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2020年(令和2年)1月31日

酪農現場のリスク管理を考える-気候変動に備える-

地域気象サービスを活用した自給飼料生産

JA東宗谷営農サポート考査役 伊藤 正英 氏

※(有)浜頓別エバーグリーン相談役 佐々木 二郎 氏の代理講演

1.有料気象情報の活用

弊社は、サイレージ調製・草地の肥培管理(糞尿散布)、 TMR製造販売について業務の委託をしている。

この中で特に6月上旬から下旬までのサイレージ調製は、デントコーンサイレージの請負作業を除いて一番草で年間の収量・品質を確保するため、委託先派遣業者に、業務の遂行について連絡を取り、調製作業のコントロールをしている。

業者の範囲は稚内、枝幸、浜頓別からで、遠方からは通勤時間だけでも2時間は必要であることから、早朝3時に宇津内、金ケ丘、豊寒別、仁達内、宇曾丹地区を巡回し、各々で天気が変わるため当該圃場に合わせて作業の可否の判断し、4時に連絡をしている。

特にこの時期はオホーツク海高気圧が、勢力を増すことから好天に恵まれない時期と重なる。

サイレージ作業は、6時に開始するが、運搬車両は牧草を積むための架装が必要であることから事前準備が必要であり、天気予報と牧草の生育を基に連絡を行なっている。

作業中でも、天候の変動による作業の中止が発生する。降雨時間、降水量の予報を基に判断するが、その再開についても、圃場に刈り倒した草の量、バンカーサイロの密封等の条件を加味しての判断が必要である。

有料気象情報の活用は、社内でも三者三様の気象システムから情報を得て意見が飛び交うため、社内で統一した情報を基軸とした作業計画を樹立する必要があったからである。

又、本施設のTMR製造に関して、パック配送をとっているが、冬場の吹雪による交通障害が発生することを前提にした配送方法である。吹雪の予報を基に、平常は2日に1回の配送であるが、通行止めの発生が事前に予測される場合は、先に構成員に配送しストックさせている。

弊社は、作業効率を向上するため再編整備事業に参加している。圃場の区画変更及び地耐圧の増強を狙うものであり、大型機械の作業性を向上し、サイレージ等粗飼料の質量共に安定供給を目標に実施している。工事現場には雨量計が設置され、降水量に応じて管理されているが、近年は短時間に大量の降雨が多く工事の進捗に影響し、工事期間が延長さている。

有料気象情報では、オプションで週1回の気象コンサルも受けている。

2.情報の精度

本情報は、建設業の熱中症予防対策・コンクリート打設用に開発されたもので、地点登録が可能となっている。地点ごとの風向き、風速、降雨等の予測がコンピューターにより計算されたものである。

実況放送的な予報も、業種によって必要なことと思うが、酪農現場では短・中期的な予報が必要でありその精度の向上が必要である。

予報と実績が乖離することから、弊社は定点カメラを設置した。定点カメラデータはWEB上にあるので、誰でも確認ができる。

作業場所ごとの天気についても、運転手のLINEを通じて、圃場作業完了後の空の画像を提供している。

衛星情報の活用によるジリ(海霧)の発生予測について研究されているが、雨雲レーダー等地域(50キロ圏内の)情報の整備等があれば、さらに精度が向上する。

冬期間の予報精度は、時間単位で当たる確立が高い。もっと夏場の予報精度が上がってほしい。

3.気候の変動(温暖化)

  • 短期間に大量の雨が降るようになった。
  • お盆から9月の上旬は晴れが多かったが雨が降るようになった。
  • 播種の限界が9月上旬であったが、9月下旬に播種しても越冬できるまで生育するようになった
  • 大きな台風が通過するようになった
  • 1月から根雪になったり降らない年もある。湿った雪が多く降るようになった。
  • 流氷が小さくなった。接岸してもすぐに離岸するようになった。
  • 冬の吹雪が連続して吹くことがなくなった。

まとめ

有料気象情報の予報が実況放送であってはならない。予報精度を見ても長期予報は気象庁が発表してから、その後各社の発表となる。どのシステムも横並びの状態であるように思う。

予報と実績という形で報告したが、予報は前日の9時、実績は一日の平均である。天気の内容を示す天気テロップコードがこれほどあり驚いた。

今回発表に際し、粗飼料分析データと気象データを対比した際に、有効積算温度が牧草の成長と栄養成分の把握に有効であることがわかった。これらをすべてが、天候が左右していることを改めて確認した。

オホーツク海高気圧は気象予報士泣かせだと聞く。大量の気象データの分析や、気象観測用機器(レーダー)の設置が必要である。宗谷の人口密集度の低い地域では、なかなか費用対効果が見出せないかもしれない。

天候を思い通りに変えることは出来ないが、地球温暖化の防止に向けて一人ひとりにできる対策は、身近に出来ること「二酸化炭素」を減らす努力が必要である。

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