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酪農総合研究所

広報「酪総研」

時の話題

No.20-5 総合討議

 

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《椋本先生への質問》
Q: スライド「過密飼養による牛の反応と損失」について、過密飼養とは牛床数に対する乳牛頭数と理解しているが、1頭当たりの餌槽幅が狭い場合や通行制御がある場合は行動や反応の変化がどのようになるのかお聞きしたい。
A: 過密による「行動変化」は以下のとおりである。
 ・飼槽での闘争増加。
 ・採食スピ−ド早くなる。
 ・休息時間が減少する △6%(50分/日)。
 ・通路の起立時間が増加する。
 ・反芻時間が減少する △7%(30分/日)。
 ・ル−メンpHが低下する △0.08(特に夜中に低下する)。
「行動変化による反応」は以下のとおりである。
 ・乳量が減少する(△1.3〜1.6kg/頭/日)。
 ・乳脂肪率が低下する(△0.1%/頭/日)。
 ・過密でル−メンpH<5.8の時間が増加する(+1.4時間/日)。
 ・飼料中peNDF減少によりル−メンpH<5.8の時間が増加する(+0.9時間/日)。
 ・体細胞数が増加する。
 ・疾病が増加する。
 ・跛行が増加する。

Q: 1日4回以上の給餌は牛の反芻や横臥時間の減少につながるとのことだが、ロボット搾乳牛舎でも同様か。またロボット搾乳牛舎の理想的な給餌回数は何回か。
また、搾乳ロボット内で“寄せエサ”として給餌する濃厚飼料も牛に影響を与えるのか。また搾乳ロボット内での濃厚飼料の給与回数は何回が理想か。
A: ロボット牛舎の場合、ロボット内での濃厚飼料の多数回給与と部分混合飼料(以下、PMR)給与の牧場が多いと思うが、理論的には1日2回程度のPMR給与が理想と考える。
また、搾乳ロボット内で給与する濃厚飼料の牛への影響は以下のように考える。一般的に牛が搾乳ロボットに入ると、1日の濃厚飼料摂取量の一部を搾乳中に摂取することになる。濃厚飼料は牛を搾乳ロボットに引き付ける手段として使用されるが、残りはPMRとして飼槽で供給される。搾乳ロボットの栄養プログラムを設計する際には、牛の摂食パターンを考慮する必要がある。PMRを1日に1回給与するより1日に2回給与する方が、牛が搾乳ロボットを訪問する強い刺激となるようである。
搾乳ロボットで給与する濃厚飼料の理想的な量は進化しているが、海外の研究では、搾乳ロボットでの1日当たりの配合飼料給与量が約4kgを超えると、給与するすべての濃厚飼料を採食できない牛がいることが示されている。濃厚飼料給与量の増加はSARA(亜急性ル−メンアシド−シス)のリスクを増加させ、PMRの摂取量を減少させ、不均一な搾乳頻度につながる。
通常、牛は1日に3回程度、搾乳ロボットを訪問する。したがって、各牛は搾乳ロボットで濃厚飼料を食べる回数が限られ、各訪問での滞在時間も限られる(約7分)。さらに、牛はペレット状濃厚飼料を毎分0.25〜0.40kgのしか食べることができないので、濃厚飼料は1回の訪問につき1.0〜1.5kgに制限すべきであるとの指摘もある。ペレット状濃厚飼料は、マッシュまたはフレ−ク&ペレットの形状よりも好ましいと言える。ある状況では、また、濃厚飼料に香味を添加することで搾乳ロボットへの訪問が増加する。研究者らは、1日当たりの濃厚飼料摂取量が8.0kgを超えるアプローチは失敗すると結論づけている。 上記のことから、濃厚飼料の理想的な給与回数についても、回数ではなく3回程度の訪問で食べられる量が重要になる。

Q: カウ コンフォート インデックス(以下、CCI)は、一日のうちどの時点で評価するのが良いか。パーラー搾乳の場合、搾乳後が牛の最もリラックスしている時間だが、ロボットでは常に牛が動いている。ロボット搾乳牛群とパーラー搾乳牛群でCCIの違いはみられるか。
A: 給餌後2時間以上経過し、牛群の7〜8割がエサを食べ終わると牛はベッドに横臥し始める。ベッドの状態を評価する指標でもあるので、採食後の牛が気持ち良くベッドで横になるかをみるため採食後2時間以降に評価すればよい。    FS牛群とロボット搾乳牛群との違いの知見は持ち合わせていないので正確にお答えできないが、ベンチマ−ク(基準値)として最小が0.8、管理の優れた牛群で0.85以上なので、0.8以上を判断基準として良いであろう。

Q: 講演にて紹介されていたファーム アニマルケア プログラムのほかに、GAP(JGAP、グローバルGAP等)、農場HACCPなど多くの認証制度がある。それらの管理内容はそれぞれ微妙に違っており農家はその選択に困惑しているが、その点についてどのようなお考えをお持ちか。
A: 農場HACCPはすでに運用されているが、併せて最近になって国が力を入れているのが日本版GAP(以下、JGAP)である。現在、畑作や園芸が先行しており、畜産は先日になって農林水産省が説明会を行なったところなので運用は今年の秋以降になると思われる。では、なぜJGAPが推奨されているかというと、2020年に開催される東京オリンピック、パラリンピックに提供される食材の調達基準としてJGAP認証品を優先採用しようという動きがあるからである。それに向けて畜産もJGAPの審査制度確立をはじめ、取組みが本格的に進むと思われる。
また、なぜ私が講演にて北米の取組みを紹介したかというと、ファーム アニマルケア プログラムは認証のみが目的ではなく、酪農家、農協組織、乳業メーカー等が一体となって展開している点が個人的におもしろいと思ったからである。認証を取り、自分の畜産物に付加価値を付けることは非常に素晴らしいことであるが、産業全体が向上していくことは大変意味深いし、それが理想だと思う。

座長
そのほかにも質問票が寄せられていますが時間となりましたので、ここで意見交換を終えさせていただきます。三人の先生方、大変ありがとうございました。

〔当日、意見交換にて質問できなかった質問票とその回答〕

《堂地先生への意見》
○最後のスライド「乳牛の繁殖成績の低下問題をどう理解するか?」において、“牛にストレスを与えているFS牛舎は少なくない”とあり、このような視点から考えても、(FS牛舎は)乳量増加や長命連産性等に大きく影響しているものと考える。  乳量を減らせば長命連産につながるという考えは間違い。先生のおっしゃるとおりだと思う。

《石井先生への質問》
Q: 

本日は貴重なお話ありがとうございました。
私の牧場では乾乳牛を繋ぎ牛舎で飼っている。同じ牛舎に分娩房(独房)もあるが、現在は移動がストレスになるのではと考え、繋いだまま産ませることが多く、分娩房をうまく使えていない状況である(初産はフリーバーンにて分娩)。 移動のタイミング等、指標があればお教えいただきたく。

A: 同じ牛舎であれば、分娩の兆候が表れたら分娩房に移動すれば良いと思う。具体的に言えば尻尾を上げ始めた時点、あるいは1回目の破水があった後、牛舎内の移動であれば足が出てからでも良い。

Q: 初産、経産に関係なく、分娩後の牛でNOSAI獣医師より「産道に傷がある」と指摘されることが多い牧場がある。その牧場は分娩後に熱を出す牛が多い。無理な助産はしていないようであるが、それ以外に産道が傷つくことはあるのか。また、その対策について教えていただきたい。
〈牧場規模〉
・搾乳牛400頭、乳量10,000kg        
・乾乳牛のBCSは3.5〜3.75、4.0以上も多い        
・乾乳前期はFS、後期はFBにて飼養        
・分娩は後期と同じ場所(ただし狭くはない)
A: 初産牛は自然分娩でも多少の擦り傷はあり得るが経産牛ではほとんどない。経産牛でも産道に傷がある場合は助産の方法に原因あると思われる。ある程度母牛にふんばってもらった後でゆっくり助産し(産道を緩めながら)、牽引する際に無理をしなければ産道に傷を付けずに助産することもできるかと思う。助産器を使用する場合も一気に引き出さず、少しずつ産道を広げながらゆっくり助産するのがカギである。また産道に傷がついた場合は放置せず、分娩当日に抗生物質の投与を行い、痛みがある場合には鎮痛消炎剤の投与を行うべきである。

《椋本先生への質問》
Q: 先ほど石井先生は“分娩房は単独になりながらも仲間の牛から見える環境が良い”と話され、椋本先生は“囲われている環境を牛は選ぶ”とのことだが、どちらの環境が良いのか。
A: 乳牛は基本的に群行動を好む動物のため分娩時期が近くなるまでは他の牛と一緒に過ごす。講演の中で話したように、「囲いあり」と「囲い無し」の両方の環境を用意した場合、分娩牛の多くは「囲いあり」の場所を選択して分娩する。特に日中分娩の牛が圧倒的に「囲いあり」の環境を多く選択している。このことから、乳牛は分娩する時だけ他の牛から離れて(隠れて)分娩する環境を好むと思われる。分娩予定牛を放牧地やパドック等で飼養している農場の場合、分娩の時だけ他の牛から離れて、遠くの見えない場所(笹藪や森林の中)でそっと子牛を産んでいる。これが乳牛の自然な行動と思う。
「囲い」は牛舎内にこの環境を作るという意味で、自然な行動をとれる環境に近づけることが大切と考える。海外の試験結果は講演で話したとおりであり、現在、北海道内の酪農場でも試験中である。スライドの写真は監視カメラで撮影した。乳牛にとってどちらの環境が良いかは牛が決めることと判断したい。

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