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No.17 平成23年度酪総研シンポジウム「牛乳・乳製品の機能性・おいしさを科学する」東北大学大学院農学研究科 教授 齋藤 忠夫

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3.監視伝染病の発生状況
 ヨーグルトは、牛乳由来の全成分を摂れるのですが、基本的には乳酸菌を摂る食品だと思われます。日本を代表するプレーンタイプのヨーグルト(スライド11)は、いずれもトクホ(特定保健用食品)の認可を取っています。電子顕微鏡で見ると必ずサーモフィラス菌とブルガリア菌の2つの菌


(スライド11)


(スライド12)

がいます。この2つの菌を使った時に初めてヨーグルトと言えます。日本人にとってヨーグルトが良いのは乳糖不耐症の人が多いからです。牛乳を毎日飲むことによって腸管の酵素反応がだんだん高まってくるとよく言われますが、そういったことはありません。牛乳・乳製品を良く摂られる方は、いつも腸内に乳糖が入ってくるので、それを分解する菌が増えてきて、それで対応しているのだと思われます。また、ヨーグルト中の乳糖は50%以上が分解されていますので、乳糖不耐症が起こりづらいということがヨーグルトの特徴の1つです。

 プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクス、イムノジェニクスとか色々な言葉がありますが(スライド12)、基本的には我々の腸管の中にいて、プラスの保健効果をもたらす生きた菌をプロバイオティクスと呼んでいます。大体が乳酸桿菌(ラクトバチルス)とビフィズス菌(ビフィドバクテリウム)です。

 プレバイオティクスは、糖とは限らないですが、乳酸菌の餌となるような成分(糖質、オリゴ糖等)を指します。この成分とプレバイオティクス(菌)を一緒に摂取する概念をシンバイオティクスといっています。世界の機能性ヨーグルトでもシンバイオテックヨーグルトが増えつつあります。

 特定保健用食品は、現在1,000近くあり、日本のトクホの市場は7,000億位で、そのうちの半部が「お腹の調子を整える食品」です。日本人はよほど腸に自信が無い人が多いのかもしれません。


(スライド13)


(スライド14)

 各社のトクホヨーグルトですが(スライド13)、特別に選抜された菌を使用しています。菌を変えるとトクホを取り直さないといけないので、勝手に菌をかえることはできません。

 ヨーグルトのポイントは2つあり、乳酸と菌体です。乳酸は弱い酸です。しかし、有害菌が無防備に乳酸を取り込むと菌体の中で強い酸に変わり、それを外に出すために相当エネルギーを使って、枯渇して死んでしまうことがあります。それからヨーグルト自体のpHが低いので、食べるとお腹のpHが下がって病原菌を減らすのに役立っています。実際にはヨーグルトの中にある乳酸が腸内細菌に利用され、さらに酪酸だとか色々な有機酸をつくることによって、病原菌を抑えているというのが本当のところです。作られた酪酸は腸絨毛をのばし、ムチン層を増やし、腸管バリアーの増加に役立ちます。

 また、菌体はついで非常に重要ですが、さきほどのプロバイオティクスでいうと、胃酸に耐えて、胆汁酸に耐えて、最後に腸管に付着すれば増殖するというプロバイオティクスの3要件を備えているような乳酸菌やビフィズス菌が多く使われています。一般的には菌体の外側の成分、内側の成分といった成分が免疫系を刺激するということが判ってきています。

 腸内細菌を考える時に、ポイントは、ビフィズス菌はお腹を守っている菌の一つですが、これは赤ちゃんの時と、大人になった時に菌が変わってくるということがあります(スライド14)。このことを基に、ビフィズス菌を区別して商品化している例としてヤクルトの商品があります。ビフィズス菌が年齢で変わるメカニズムは最近わかってきています。


(スライド15)


(スライド16)

 この報告(スライド15)によって大きく考え方が変わりました。メタゲノム解析で糞便からの全部のDNAを読んで、菌体のセットだけを取り出すと、1,000種類以上の菌がいるということがわかりました。人の細胞は60兆個ですが、それの150倍の腸内細菌がいるのです。要するに腸内の健康が、我々の総ての健康を支配しているといって過言ではないということです。もう1つショックなのは、上から多い菌数の順に並べると57番目までに乳酸菌もビフィズス菌も入ってこなく、要するに殆どいないということです。ですから日々、相当に留意して食べ物に気をつけるとかストレスを減らすとかしないと我々の健康は維持できないということがよく分かります。また、ヨーグルトなどで日々有用菌を補うということも大切であることを教えてくれました。

 プロバイオティクスのなかでも免疫機能を刺激するものをイムノバイオティクスと呼びます。まだ人間の腸管ではまだ確認されていませんが、セグメント細菌(スライド16)というのが、生まれた赤ちゃんの腸管に突き刺さり、それが刺激となって、たとえばリンパ球のTh17細胞を増やし、その後の免疫体系ができるのではないかといわれています。ただそれが暴走する可能性があるので、今後はそういうものをプロバイオティクスで制御していこうという考え方も出てきています。

 それから、今までは肥満というのは、肥満の結果として腸内細菌が乱れてきたと考えられていましたが、最近では、腸内細菌の乱れが肥満を作り出していると考えられています。痩せたマウスに、肥満マウスの腸内細菌を移すと、痩せたマウスが肥り始めるということがあります。そういう基礎研究が増えてきています。 雪印のガセリ菌SPを摂取することで、腹囲脂肪(メタボ)の制御が可能ではないかという論文も出されています。

4.病原体を侵入させないために
 チーズは基本的に機能性のペプチドとカルシウムを摂る食品です。多くのチーズは熟成させます。パルミジャーノ・レッジャーノは18ヶ月以上、実際には24ヶ月〜36ヶ月も熟成させます。なぜ、それだけ待つのか。それは基本的にはグルタミン酸(ナトリウム)の量が増えてきて、うま味が増えてくるということです。グルタミン酸の増加を待ち、そのために長い熟成期間を費やしているということです。熟成が進むとチーズは茶色がかってきますが、アミノカルボニル反応の結果といわれています。おでんやカレーが翌日おいしいのも、ビールののどごしもこの反応に関係しています。こういう反応が熟成の過程で起きています。芳香成分もどんどん出来てきます。例えばブルーチーズのピカンテタイプの舌を刺すようなチオエステルの風味が好きだという人もいますが、そういったものも熟成過程のなかで出来てきます。そして、機能性のペプチドも沢山出てきます。フレンチパラドックスのように、チーズをいっぱい食べているのに、あの抗酸化作用はどこからくるのか。赤ワインとチーズの組み合わせの中でチーズ由来の抗酸化ペプチドが効いているのではないかという学説が有力です。チーズの中に血圧を下げるペプチドもいっぱいあり、また塩分もそれほど高くないので、食べ方によって、血圧が下がると考えられます(スライド17)。


(スライド17)


(スライド18)

 これは芳香成分を解析する装置です(スライド18)。たとえばゴーダチーズだとアセトインが出ていますが、ブルーチーズになると酪酸だとかヘキサン酸だとか臭そうな酸が出てきています。しかし、これがおいしさに繋がっています。こういった成分も単なる香りではなく、生理機能に繋がっていると思われます。

 チーズはカルシウムを摂る食品です。その理由の1つにCPPやMBPがあります。骨粗鬆症を防ぐには、カルシウムをコツコツと貯金していくしかありません。カルシウムを摂ると同時に運動をし、日光にあたらなければなりません。小指の先を日にあたるだけでも良く、また効果は1ヶ月近く残ると言われています。少し歩き、日に当たり、チーズを食べれば、骨粗鬆症は大きく減らせるだろうと思われます。

 先程の食品の説明ですが、カルシウムを単独で摂ってもだめです。生体に利用されないように作られているカルシウム塩を摂っても、吸収されません。ここが食品として作られているカルシウムかどうかとの臨界点ですので、これが理解できればそういう食べ方はしなくなります。これもそうですが(スライド19)、カルシウムサプリメントで摂るよりは、チーズ(食品全体)で摂った方がずっと効果があります。

 むし歯について、カゼインはもしかすると、エナメル質などの歯との関係が非常に深く、現在新たにみつかった機能は、最初からあった機能だったかもしれないと考えられます(スライド20)。


(スライド19)


(スライド20)

おわりに
 大人になっても乳を飲んでいるのは、我々人類だけです。自然界の人を除く全ての哺乳動物は、大人になると離乳します。しかし、大人になっても栄養素密度の高い優れた食品としての乳および乳製品を摂ることで、現在の長寿社会が実現していると考えられます。世界の国々が理想としているのは「日本食」です。これに、有用な機能性成分の宝庫である乳および乳製品を日本食に加えることで、さらに世界で最も優れた食事が実現する訳ですので、これを毎日摂りたいものです。将来的に、世界で一番高い我が国の乳価(8000円以上/100kg)がもう少し安価になると、国民の摂取量もさらに増加し、「健康寿命」の長い本当に幸福な長寿社会が実現すると思います。

以 上
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