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No.15 平成22年度酪総研シンポジウム「酪農現場におけるバイオセキュリティ 〜予防とリスク低減のために〜」 第2部 「北海道における取組と課題」 北海道農政部食の安全推進局 畜産振興課家畜衛生グループ 主査 立花 智

1.動物の感染症が成立する3つの要因
 感染症が成立する三つの要因は「病原体」、「伝播経路」、「感受性動物」である。病原体には、ウイルス、細菌、マイコプラズマ等があり、感受性動物に到達するための伝播経路には、人、家畜、野生鳥獣、水、敷料、飼料、車両、器具、機械等があり、こういった要因がバイオセキュリティを考える上で一番のポイントになる。

 人類が、畜産物を安定的に生産するために感受性動物である家畜を糞尿のある環境で、しかも、1か所に高密度に飼養するようになり家畜の伝染病が発生したと考えられている。このような飼養環境は、生態系においては特異な状況である反面、畜産物を安定供給するためには、人類がしっかりとコントロールしなければならないことを自覚しなければならない。

 病原体が農場に入ると、牛に対し咳や下痢等の手段を使い、隣の牛に伝播する経路を作り出す。病原体は、高い増殖性、強い伝播力が合致した時に感染症が猛威を振るうという状況になる。

2.感染症と伝染病
 感染症は必ずしも動物から動物へ伝播する病気ではないが、伝染病は動物から動物へ伝播し重症化していく。伝染病の重症化要因は、伝播しやすい条件で高い増殖性と強い病原性が選択されていき、さらに病原性が強くなるためと考えられている。家畜や家禽は、極めて高密度飼育であり、常時糞尿と同居しているような条件では直接感染又は空気感染による伝播が容易に起こる。また、シーズンになると養鶏場の屋根が渡り鳥の糞で真っ白になる事例がある。家畜というのは高密度で飼育されており、野生動物を惹きつけていることを私たちは理解しなければいけない。

3.監視伝染病の発生状況
 平成22年1月〜12月、北海道における牛に関する監視伝染病の発生状況は表1のとおりである。ヨーネ病、白血病、サルモネラ症が多い。

表1 監視伝染病の発生状況

(1)牛ヨーネ病の発生状況(図1)
 最初の発生(昭和53年)から徐々に増加傾向にある。北海道の病気だとよく言われていたが、本州では検査していなかったというだけの話で、今では半分以上が本州で発生しているという状況にある。平成20年以降は減少しているように見えるが、乳用牛の糞便培養の成績がもし陽性であった場合には、採材した時点まで遡り生乳を廃棄することになり、このような問題もあり乳用牛については、糞便培養をおこなわないことから、発生頭数が減っているという現実がある。平成22年の全国集計については公表されていないがほぼ同じ規模での発生と考えている。

図1 牛ヨーネ病発生頭数の推移

(2)牛サルモネラ症の発生状況(図2)
 昭和55年の発生は、乳用雄子牛の集団飼育の影響で突出している。以降、カウハッチの普及等により暫時減少している。注目すべきは平成4年頃に乳用成牛にも発生しはじめ、それ以降もなかなか減少しない状況となっていることである。逆に肉用牛の発症は減少し、乳用成牛の発症が殆どとなっている。

図2 牛サルモネラ症発生頭数の推移

(3)牛白血病の発生状況(図3)
 全国での発生は、平成14年の年間200頭を越えたあたりから急激に増加している。平成22年の全国発生状況は1,400件を超え何らかの対策が必要となっている。

図3 牛白血病発生頭数の推移

4.病原体を侵入させないために
 バイオセキュリティのために農場で必要な対策は、まずは病原体を感受性動物に辿り着かせない、つまり農場に侵入させないということが重要である。

(1)農場への出入り
 例えば、畜舎毎の出入り口に踏込消毒槽を設置、靴の汚れを十分に落としてから消毒液に浸す。消毒液は時間の経過とともに効力が落ちるので随時交換が必要である。また、消毒槽は冬場に凍結すると意味がないので、農場室内に設置し、消石灰を踏んで中に入る。ブーツカバーの着用や農場毎の長靴履き替えも大切なポイントになる。

 また、不用意に他の人が入らせない対応も勿論重要。車輌の出入りは、噴霧器等を使用したタイヤ消毒を行う必要がある。北海道の冬期間は厳しい季節であるから何もしなくていいというわけではなく、出来ることからやるということが大切である。車中マットに専用長靴を置きそのマットを洗う、噴霧器を車中において凍らせない、ハンドルやペダルの消毒等がポイントになる。作業終了時、手の消毒も重要である。さらには農場出入口の消石灰散布も重要である。

 消毒液の凍結防止対策とし、十勝家畜保健所がウィンドウォッシャー液を消毒薬に入れる実験で、PHはキープされマイナス20℃でも凍結はないことがわかった。水:ウォシャー液=1:1で半凍結、シャーベット状になるが、PHがキープできていれば半凍結でも十分と考える。その他、飛行機体用の不凍液利用等、アイデアを出しているが、野外では環境への影響も考える必要もある。

 死亡牛の扱いについては、レンダリング業者の運搬車がバイオセキュリティ上では危険。。この業者による伝播リスクも高いと考えられ、病原体侵入を防止するうえでスライドの受け渡しの方法は理にかなっている。(図4)

図4 死亡牛の扱い

(2)家畜の導入
 家畜を導入する場合は、導入直後に牛群の中に入れないで、隔離飼養をし、病気チェックをし、異常を発見したらすぐ獣医師に報告し対処することが重要である。この対応はかなり重要度の高いポイントである。

 また、野生鳥獣、害虫の侵入防止について、通常牛舎は換気の観点から窓が開放になっている状況でリスクをゼロにすることは不可能だが、テグスの設置やロールパックサイレージ用の網を再利用するなどの事例がある。

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