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広報「酪総研」

時の話題

No.13 平成21年度酪総研シンポジウム「国内外における企業、団体等の再編動向とその対応について−変貌する市場環境において酪農乳業はどう対応していくか!−」第2部 話題提供 「(2)酪農経営形態の変化について」北海道立十勝農業試験場生産研究部 主任研究員 原 仁

1.はじめに
 大規模農家は「私たちは小規模農家がいるからやっていける」と言う。リタイアした小規模農家の小さな圃場や傾斜のある土地は、その条件にあった経営形態でなければ難しい。大きい農家同士が戦っても効率のよい方が勝つに決まっており、小規模農家が頑張れるような風土・組織を作らないと酪農経営の正常な発展はない。特にリタイアの数が多い地域ほど小規模農家が頑張れるような風土・組織をつくって欲しい。

  消費に置き換えると、数が少なくなるということは、アイテムが少なくなることである。例えば、10社で20個のアイテムを作っていたものが6社で10個になると、効率はよくなるがアイテムは半分しかなく、昔食べていたものが今は食べられないという状況が起こり、社会全体の消費が減る。

  このような状況は農業生産現場で起きてはいけない。北海道、特に道東道北のみなさんは府県の状況をみるとまだまだ頑張らなければいけないし、頑張れる実力はある。

2.現在の酪農業のイメージ
 家畜飼養農家の仕事は、「きつい・きたない・危険の3Kである」とよく言われた。特に儲かっている農家ほどきつい職場であり、キチッと仕事をする反面、ゆとりがなかったが、働いて得たお金を大切に使う傾向があった。しかし、ヘルパーやコントラクター、TMRセンターなどの支援組織の発達で、「3Y 経済・こころ・生活のゆとりのある仕事」になりつつある。やる時はやるが、一仕事終わったら家族でリラックスし、それが生活のゆとりとなる。

3.酪農業の特徴
 酪農の特徴は、(1)稲作や畑作と比較し気象影響が軽度 (2)価格が安定 (3)様々な情報とそれを指導する専門家が存在 (4)日々に経営改善のチャンスが存在することである。特に重要なのは、(3)指導機関をはじめ獣医師やメーカーや乳業など、これだけ指導するグループがいる業種はなく、このような指導機関をどのように利用できるかが非常に重要である。また、(4)毎日チャンスがあるからチャンス意識が小さくなっていく。1年に1回しかチャンスがないと思えば、酪農家も真剣に考えるであろう。

4.酪農経営の動向
1)経営規模
  北海道は規模拡大が進んでおり、一戸あたりの乳牛飼養頭数に合わせて一戸あたりの飼料基盤が伸びているので、一頭あたりの飼料畑面積はさほど落ちていない。

  ただし、規模拡大が進むと、乳牛飼養農家戸数は減少している。これはある農家にとっては良い条件でもある農家にとっては厳しい条件だったと捉えていただきたい。

2)経済性
  酪農収入は漸増してきていたが、最近はやや落ち込んでいる。平成18年以降の計画生産や資材高騰などで所得が低下した。機械施設投資額は農家の心情が端的に表われており、所得減が予測される、あるいは生産が伸ばせないと予測された場合は投資を控える傾向がある。10年、20年に一回の計画生産ならば、さほど影響は大きくないが、4、5年に1回の計画生産となると、農家の投資が止まる可能性がある。

3)規模別
  儲かっているか、コストが高いか低いかはそのときの状況によって違う。

  大規模経営の場合は、収入もある程度高いが物財費が非常に高く、飼料価格等の状況によってコストが大きく変化する。飼料が安くて乳価が高い場合、かなりコストが下がるが、逆に資材が高くて乳価が下がるとコスト高になり儲からなくなってしまう。

  また、小規模経営は生産費用の中で飼料代の次に家族労働費が高いが、大規模経営は家族労働費が小さくてすむという構造のため、これから10年、20年先の乳価や物財費、特に飼料代を見通せるかどうかにより、大規模経営を目指すかどうかの判断がなされると考える。つまり、大規模経営は薄く広く儲けることになるため、そういった大規模経営の特徴を踏まえながら酪農家は投資を考えるべきである。


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4)経営間格差
  規模が大きくなると1頭あたり所得が少ないように感じる。これは、大規模経営では費用のウェイトの大部分を占める物財費が上がっているためである。しかし、実際は幅が広く、効率があまりに違いすぎる。我々や農協はなるべくこの格差レベルを縮小させるよう努力したいところである。

5.外部支援組織の役割と経営的な位置づけ
 北海道酪農が伸長した要因は、草地の改良事業をはじめとした外部支援組織の発展により、いろいろな形で農家の経営を支えていることにある。ただ、唯一支援が困難なのは糞尿処理への支援である。さまざまな支援を組み合わせれば、多くの部分は外注で対処できるということになる。酪農家の大きな資源は土地、機械、乳牛である。共同、法人経営の場合は、土地の所有は個人で残りは法人で所有、利用するケースが多いが、それでは個別経営としての自由度はない。そこで、TMRセンターやコントラクターを利用することにより自由度を確保した上で経営拡大を図る方法が出来上がってきた。

6.農業生産法人の設立状況
 農業生産法人は道内全体で2,200戸程度あり、そのうち半分は畜産関係、うち酪農は400戸である。酪農は、以前は比較的共同経営が多かったが、2000年以降に設立された法人の割合は約30%であり、一方、水田・畑作は40〜45%である。

  畑作のほうは個別農家を支援するだけのいろいろな外部の組織がうまく作れないため法人化が進んだが、酪農の場合は支援組織が整っているので個人でもまだ相当頑張れる状況にある。

7.ヘルパー組織の利用状況
 外部の支援組織で最初に出てきたのはヘルパー組合である。参加組合数も多く、参加率が80%を超えた。個別経営はほとんど参加しており、最近では年間15日間利用している。

 特に家族で出かけるときにヘルパーを利用する。

8.コントラクターの設立および活動、利用状況
 平成になって民間が運営するコントラクターがでてきたが、景気がよくなると会社をたたんでもとの業種(建設業)に戻っていった。それ以降は農協を中心にしっかりとした基盤を作ってきたが、今一番多いのは営農集団型という農家を中心とした仕組みであり、道東・道北に多い。

  ただ、一つの町に農協経営あるいは有限会社のコントラクターがあるが、40〜50%の利用率から考えても、道東の町の酪農規模に対して、農協経営のコントラクターや民間一社のコントラクターだけでは全然足りない。したがって農家独自に受委託作業をやっているケースも多いが、季節的な作業が多いことからなかなか増えない実態にある。

  コントラクター作業で一番多いのは、やはり牧草の収獲作業であり、農家独自で収穫するより品質が良い場合が多く、利用者も増えていく状況にある。一般的には、現在であれば出荷乳量で500トン以上が利用の基準となっているようである。利用状況としては、規模が拡大するにつれ参加率も高くなっており、1,000tを越えると参加率が100%になる。現在は作業を手伝ってくれる会社ができたので、家族労働の壁を突破したといえる。

9.TMRセンターを中心とした飼料供給システム
 府県と北海道の違いは飼料畑を共同で使うことが特徴的である。TMRセンター方式は、飼料畑と施設を共同で使い、出来上がったTMRはバラでのダンプ配送やロールのような形で個別経営に供給する。平成20年末、約31のTMRセンターが道内で稼動している。

10.TMRセンターの特徴と期待される成果
 TMRセンター方式の特徴は、(1)機械の共同作業 (2)農地の集団利用 (3)配合飼料の供給 (4)雇用労働の利用 (5)資材の購入販売である。

  混合飼料の供給は餌設計を実施し、各農家に供給する。現物でいうと15円から20円くらいで、一頭あたりにすると1,000円から1,300円という額になる。

  TMRセンターでは毎日サイレージの水分量を測る。水分量が高いと比較的多く食べるが、水分量が低いと食い込みがよくない。餌設計を間違えると、残食が多くなり廃棄量が増える。廃棄量の許容範囲は5%以内に収めることであるが、実際は難しいようだ。

11.TMRセンター事業の効果
 過密牛舎等の環境条件もあるが、餌を変えれば乳量は出てくる。TMRセンター加入前後では2,000kg違う。その儲かった2,000kgで、TMRセンターが運営できていれば特に問題は無い。

12.酪農経営形態の変化について
 北海道全体では、自己完結型個別経営でスタートしたが、経営展開は、支援組織があるところとないところで大きく分かれる。農協管内で酪農家が多ければ支援組織は作りやすいが、酪農家が少ないところは、支援組織が作りづらい。

  支援組織のあるところはコントラクター、TMRセンターを利用した経営を展開し、これらの支援システムを使いながら、さらには雇用労働も入れてもっと規模が拡大する。一方、支援組織がないところはこういうものを使えないため、規模を拡大するために雇用を入れる。あるいは何戸か集まって一つの酪農共同法人を作る。自分たちだけでなく、地域の方を雇用として招き入れてさらに規模を大きくする等展開を広げている。

  ほとんどの大規模農家は、これからもがんばらなければいけない。実際のところ酪農経営は儲かる要素が多い。

13.現状の課題と対応方向
 個別農家ごとの課題は様々で、個々に対応している。近年、リタイアされた経営分の農地や出荷乳量枠を残った経営で消化できなくなっており、特にこの先5年を考えると厳しい。地域のまとまりと向上心、個別経営・地域の掌握が重要で、地域をマネージメントすることが必要である。

  一番取り組んでほしいのは農協である。農家がリタイアした場合の出荷乳量枠や、特に飼料畑は放っておくとあっという間に傷んでしまうため、それらをどのように利用するのか、これが地域マネージメントのひとつの手段である。

  60歳になったら、後継者のいない農家には、いつまで酪農をやっていただけますか、と質問をさせていただく。農協としてどう使うか、新規就農者を入れるのか、それともまわりの酪農家で使うのか、TMRセンターとして使うのか考えていかないと、いざ土地が空いてから募集しても間に合わない。

14.現状の課題と対応方向
 現状の課題への対応方向としては良い指導者と良い生徒の関係を指導者と生産者が一緒に築くことである。

インセンティブとモチベーションの関係は、モチベーションとは生産者側の要因で、インセンティブは我々が生産者に提供する外部からの刺激である。生産者のモチベーションを高めるために、インセンティブを与え、逆に我々は生産者からこういうことをやってほしいというインセンティブを与えられている。インセンティブとモチベーション、良い指導者と良い生徒の関係が希薄な地域は、進んでいる地域に比べて2歩も3歩も遅れている。対応方向としては、このインセンティブとモチベーションの関係を構築し、維持することが重要である。