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広報「酪総研」

時の話題

No.10 平成20年度酪総研シンポジウム「自給飼料の最大活用を実現する!!−乳牛改良の方向性と飼料生産の優良事例−」第2講演 「越冬が難しい根釧地域でのアルファルファ栽培の経験」北海道別海町 北矢ケレス友の会 福本 弘一

別海町におけるアルファルファ栽培および「北矢ケレス友の会」結成のきっかけ
  別海町は積雪量が少なく、土壌凍結が深刻な土地であり、一般的にアルファルファの栽培は不向きと言われていた。しかし、5年前に越冬が期待できる新品種の話を耳にしたのをきっかけに、地区の有志と共に「北矢ケレス友の会」を結成、アルファルファの普及定着に取り組んでいる。

別海町における積雪・土壌凍結深(出典:根室農業改良普及センターHP)
※別海町の積雪量と土壌凍結の深さを表したグラフであり、
雪が少なかった昨年の冬は最大で58cmも土壌が凍結。
別海はとても厳しい土地条件であることがわかる。
(画像をクリックすると大きい画像を新しいウィンドウで表示します)

 このアルファルファ「ケレス」が本格発売される前の平成16年、地元の雪印種苗の営業マンから「夏播き種子に混合して播いてみないか」との熱心な話があった。当時アルファルファは早春に播種しないと越冬できないという認識が強くあり、半信半疑であったが、遊び心で播いてみたのであるが、翌年、思いのほか個体が残ったため、「これはいけるぞ」と思い、平成18年に地元の仲間とともに栽培方法の勉強や草地のことを語り合う会として「北矢ケレス友の会」を結成した。会を結成後、平成18年より農協、普及所、町、支庁などを招いて毎年実施しており、昨年は新聞などにもその話題を取り上げられるまでになった。

アルファルファの導入状況
 現在、更新面積を合わせると会員4軒で150ヘクタール近い牧草地が「ケレス」が混播された草地となっており、私の牧草地面積は110ヘクタールで、そのうち70ヘクタールはアルファルファ混播のチモシー草地である。特に私が草地づくりをする上で取り組んでいることは以下の通りである。
 (1)ライムケーキの利用
 (2)スラリーの適正な利用
 (3)播種時期、アルファルファの混播量の設定
 (4)表層攪拌処理
 (5)土壌分析、サイレージ分析の実施

福本牧場の概況

アルファルファ栽培草地の状況

  • 夏に播種した草地の播種当年秋の生育状況は、根粒菌も定着して順調に生育していた(画像1)。
  • ひと冬越した圃場の状況については、播種量は3kg程度だが、かなり個体が残っている(画像2)。
    ※この圃場では2番草を収穫後ためしに1ヵ月後放牧を実施。上部のみ採食の跡がある。
    去年の冬は土壌凍結が厳しかったが、播種した翌春に根が横に広がっている状況が見られた(画像3)。
  • 播種して2年目の圃場は、厳しい土壌凍結があった為、越冬が懸念され、一見枯れているように見えるが、良く見るとちゃんと個体の再生が始まっていた(画像4)。
  • 3年目の畑の状況を見ると、秋のスラリー散布時にスラリータンカーで踏まれた個体もちゃんと再生している(画像5)。
    ※2年〜3年かけてしっかり個体を育成すれば、大きな踏圧にも負けなくなってくる。
  • 3年目の秋にはしっかりした個体になっており、株も充実してきている(画像6)。
    ※3年目にもなると1株のボリュームが大きくなり株数が減少してもアルファルファの量は確保できてくる。
  • 4年目の春の状況。しっかりした個体を育成し、前年冬の強い土壌凍結にも心配がなかった(画像7)。

草地造成における「完全更新」と「表層攪拌」の比較
 私の牧場では草地造成は「表層攪拌」の方法をとっているが、表層攪拌とプラウ耕起で処理した土壌にどの程度栄養分の違いがあるか気になり、今回農協の牧草地を借り受け「表層攪拌」と「完全更新」とのアルファルファの生育状況の比較試験を1haの草地で実施した結果は以下のとおりである。

  • 表層攪拌はプラウ耕起に比べ有効態リン酸で約8倍程度MgO(マグネシウム)で2倍量、K2O(カリ)で4倍量多いことが分析で分かった。やはり表土に栄養分が蓄積されている。
  • これらの数値から更新時にリン酸資材で一定量の減肥が可能。
  • しかし、pHとカルシウムの値が低いので、特にアルファルファを栽培する場合には、表層攪拌
    ではしっかりとpHの矯正とカルシウムの補給を行うことが肝要(私はライムケーキを多用)。

 また、表層攪拌では前作の植物残渣が表層に存在し、発芽密度は完全更新の方が高いと思われるが、その植物残渣がアルファルファの土壌凍結地帯における越冬の為には役に立っている。おそらく、表層の残渣が根の浮き上がりを抑制していると思われる。これによりアルファルファの密度は低いが、越冬する確率を高くしている一つの要因と考えている。

地域における使命〜自給飼料の生産強化〜
 最後に、新しく合併を予定している我が農協は、平成21年の4月1日より「道東あさひ農協」として出発する。新農協は全道の生乳生産の約1割を担うという巨大農協であり、その大きな生産基盤と共に大きな使命も同時に担うことになる。

  昨年は穀物価格の高騰で輸入飼料が値上がりし、大変な思いをした。しかし、その昨年の教訓を生かし、新農協においても自給飼料の質、量の向上を図っていくことが、その使命を果たしていく為には重要と考えている。

  また、生産コスト削減や輸入飼料の高騰に左右されない安定した酪農経営を行う上でもアルファルファの栽培は有効であるため、これからも引き続き仲間と共にケレスを活用し、安定した酪農経営を目指していきたいと考えている。

以上