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広報「酪総研」

時の話題

No.10 平成20年度酪総研シンポジウム「自給飼料の最大活用を実現する!!−乳牛改良の方向性と飼料生産の優良事例−」第1講演「自給飼料多給、栄養管理の省力化を視野においた乳牛改良のススメ」(独)北海道農業研究センター 主任研究員 田鎖 直澄

酪農を取り巻く現状は!
 酪農を取り巻く現状は、輸入穀物の量・価格・品質の不安定性、個体乳量の増加による生産性コスト低減の困難性、穀物多給による繁殖問題や周産期病などを抱えている。

 そして濃厚飼料多給を前提としたピーク乳量追及型の乳牛改良は、泌乳ピーク時のエネルギー不足により、様々な悪影響を招くおそれがある。また、泌乳中後期の乳量低下が大きく、追従した栄養管理を必要とする。

 そう考えると、国産自給飼料を確実に活かし、かつ生産性の高い酪農には、従来型の乳牛飼養技術では無理がある。そこで、新しい飼養管理技術の一つの考え方である「高持続泌乳型飼養管理技術」の開発、応用を紹介する。

泌乳曲線への改良 〜泌乳期間中の乳量分配への改良〜
 泌乳ピークの乳量を抑え、かつ泌乳中後期の乳量の落ち込みを緩やかにすることは、乳牛の栄養管理の省力化や自給飼料多給型酪農を推進するのに役立つと考えられる。そして、昨年の秋から、乳用種雄牛評価成績に泌乳持続性形質が掲載されている。

 現状の高能力牛の飼養管理では、エネルギーバランスに問題があり、分娩後3週間は絶食状態と同じくらい身を削り、中後期には乳量が大きく減るので分娩時よりも肥り、過肥症候群・次産時の泌乳初期疾病の多発要因となっている。特に、種付け適期に最も乳牛のコンディションが悪い。

 泌乳持続性の定義は、ピーク乳量を持続する能力で、ピークからの乳量の低下が少ないか、低下が大きいか。公表されている種雄牛の評価値は、相対的尺度で表現されているが、交配時に泌乳持続性の高い種雄牛の精液を選択する(高持続性)ことで娘牛の泌乳曲線が平準化される。

高能力牛で栄養管理を放棄すると

泌乳曲線平準化のメリット
 泌乳曲線平準化のメリットとして、一つに必要な栄養量の多くを粗飼料でカバーできる可能性がある。この場合、十分な良質粗飼料を食い込める牛、食い込ます技術が重要である。

 二つ目に泌乳持続性を高めて中後期に乳量が増加しても、高栄養の飼料は必要なく、良質粗飼料や粕類などの比較的安価な飼料で乳生産が可能となり、配合飼料の節約ができる。

図.日本飼養標準「乳牛」2006をベースにした栄養飼料シミュレーション試算結果


栄養設計試算結果 305日粗飼料乾物給与量と粗飼料品質 体重650kg、305日乳量 10000kgとして

 次に、ピーク乳量時の負のエネルギーバランスになりにくいことにより、繁殖性が保てる。さらに、乳量変動が少ないので、飼料設計や牛群管理が容易、TMR等の飼料づくりが単純化できる。泌乳後期のエネルギー蓄積が少ないので過肥予防ができる。

  そして、泌乳持続性が高い時は、泌乳後期でも乳量が高いという特性を積極的に活用し、泌乳期間の延長、ひいては乾乳期間の短縮も可能である。搾乳期間の延長は、今まで搾っていなかった期間も搾ることができることにより収益が期待される。泌乳持続性の意義を一言で言うと「泌乳初期のエネルギー負荷を少なくして高い生涯生産や飼料自給率を目指す泌乳曲線を平準化するための大きな手段」であろう。


(R.Rastaniら、2005より)

最適な搾乳期間を求める必要性
 最適な搾乳期間は? 繁殖は1年1産が原則である。そのために泌乳持続性を向上させ、受胎の向上を図ることが原則である。それにより、配合飼料の節約、受胎の促進、疾病の減少により経済性が向上する。一方、泌乳持続性が高い時は、泌乳後期でも乳量が高い特性を積極的に活用し、最適な搾乳期間を求める必要がある。

以上