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No.10 平成20年度酪総研シンポジウム「自給飼料の最大活用を実現する!!−乳牛改良の方向性と飼料生産の優良事例−」所長挨拶および平成20年度酪総研シンポジウム解題 雪印乳業(株)酪農総合研究所 所長 川成 眞美

酪農総合研究所 所長挨拶
 平成20年度酪総研シンポジウムのご案内をしたところ、時節柄何かとお忙しいところを、このように多くのご参加をいただきまして誠にありがとうございます。心より御礼申し上げます。

 ご案内の通り、今回のシンポジウムは、現在、国際穀物の不安定や環境問題等から、自給飼料の増産・活用による酪農経営基盤の強化が重要であることから『自給飼料の最大活用を実現する!! −乳牛改良の方向性と飼料生産の優良事例−』をテーマとし、4題の発表を用意しました。そのポイントは、解題でご紹介しておりますのでご参考にしてください。

 さて、昨年、我われの身近に関係する様々な世界的規模の出来事を経験し、そして、新たな年、丑年2009年を迎えました。

 酪農乳業をめぐる環境は、経済不況や輸入圧力の増大など取り巻く環境が激変しております。また、北海道洞爺湖サミットでも穀物高騰や輸出規制による世界的な食糧危機問題が論議され、食料の安全保障が大きくテーマに浮上し、我が国の食料自給率40%割れが問題視されてきました。

 このような中、私ども酪総研は、酪農・乳業界が果たすべき役割と国民の期待に応えるために、食料の安定供給や健康への貢献、それを実現すべく酪農生産基盤の維持と価値ある乳・乳製品の提供、そして環境に配慮した持続型産業の確立という命題を痛感するとともに、日本酪農の強みをどう生かすか問われる時であると強く認識しております。

 ご承知のように、牛乳の消費の低迷に歯止めがかからず、生乳生産も計画生産や環境変化と相俟って酪農家戸数、乳牛頭数の減少により、地域差こそあれ下振れしています。しかし、この度、生・処それぞれの決断によって乳価再値上げとしました。今後、流通、消費者に理解をいただくために関係者一丸となって行動していかなければなりません。

 さて先日、「当社と日本ミルクコミュニティさんの共同持株会社」による経営統合についてお知らせをいたしました。ご案内のとおり手続きを経て、10月1日を期して株式移転により経営統合を目指して参ります。この新しい企業グループは、消費者の意識や行動の変化や酪農基盤の安定と食料自給率の向上など多くの課題がある中、消費者及び酪農生産者の皆さまとともに「乳」のコミュニティーを育んでいきたいと考えております。酪農生産基盤の維持、国際競争力に強いチーズ商品の提供、また新しい食文化の創造、そして新しい健土健民の確立に向けて精一杯取り組む所存であります。

 特に、本日のテーマでもあります自給飼料生産の取り組みにおいては、雪印種苗との連携のもと、酪総研の最優先課題として事業展開を進めて参ります。

 最後に、本日のシンポジウムが日本酪農の進むべき方向性を示唆するヒントとして、その一考の糧となることを願っております。どうか、皆様方からも貴重なご意見を賜りますようお願いして、はなはだ簡単ではございますが、主催者の御礼の挨拶とさせていただきます。

平成20年度酪総研シンポジウム解題
 わが国の酪農乳業界は、かつてないほどの国際化の波にさらされており、また、食品メーカーとして食の安全・安心へお応えするとともに、その安定的な供給への責務を痛感しているところです。

  また、地球温暖化や水資源確保など、グローバルな環境問題に対する国民の関心も高まり、このような視点を踏まえた酪農生産現場へのアプロ−チが必要となっています。 

  自給飼料の増産・活用による酪農経営基盤の強化が叫ばれており、併せて、環境へ配慮した持続型社会の形成も希求され、酪農乳業の果たすべき役割は大きく、おおいに期待されているところでもあります。

  このようなことから、今回のシンポジウムは、『自給飼料の最大活用を実現する !! ‐乳牛改良の方向性と飼料生産の優良事例‐』をメインテーマとし、以下の4題をご用意いたしました。ご参集の皆さまからも多くのご意見・提言を賜わり、意義あるシンポジウムとしたい所存です。

(1) 「自給飼料多給、栄養管理の省力化を視野においた乳牛改良のススメ」
  濃厚飼料多給を前提としたピーク乳量追求型の乳牛改良は、泌乳ピーク時のエネルギー不足により、様々な悪影響を招くおそれがある。また、泌乳中・後期の乳量低下が大きく、それに追従した栄養管理を必要とする。
  泌乳ピークの乳量を抑え、かつ泌乳中・後期の落ち込みを緩やかにすることは、乳牛の栄養管理の省力化や自給飼料多給型酪農の推進にも役立つ。
  昨年11月より、乳用種雄牛評価成績に「泌乳持続型形質」が登載され、この機会に、この形質の栄養管理面からの可能性を紹介する。

(2) 「越冬が難しい根釧地域でのアルファルファ栽培の経験」
  実際の酪農現場における自給飼料の生産・活用について、主として、5年間に亘るアルファルファ栽培の経験を紹介する。
  アルファルファ新品種「ケレス」の名称にちなみ「ケレス友の会」を結成し、地域、グループ活動を展開されている。
  アルファルファの優れた品種力とチモシーとの混播、さらには肥培管理の工夫などによって、牧草地の永続性アップと牧草の栄養改善を目指している。

(3) 「南十勝における自給飼料作物の生産・利用強化の取り組み」
  実際の酪農現場における自給飼料の生産・活用について、TMRセンターの運営を中心に紹介する。
  組織化によって、自給飼料生産とサイレージ調製の強化をはかり、さらにはTMRの製造供給(給与)を実現している。
  粗飼料収穫や飼料調製作業の分業化を推進することによって、効率的な酪農経営を目指している。
 
(4) 「牧草・飼料作物の新品種と現場での活用技術」
  わが国は狭い国土の中、北海道から九州まで多岐にわたる気象条件、さらに多様な土壌条件(土質)にさらされており、自給飼料生産においての作物・品種選定は、重要条件に位置付けられている。北海道内においても同様に、地域によって適応作物、品種が異なっている。
  牧草地の草種構成による栄養・嗜好性の相違、サイレージの発酵品質の改善、低収草地の簡易更新技術等、現場での取り組み事例を含めて紹介する。
  環境に適応した品種改良、適性品種の選定、新品種の特性等についても、育成者の立場から品種改良の背景、考え方を含めて紹介する。
 
  これまで、経済成長や食生活の欧米化等にともない、牛乳乳製品の需要増には、国産だけでは対応できず、生乳生産の拡大とともに、飼料の海外依存度を高め、国際化の進展による海外乳製品の輸入で補ってきました。特に、北海道酪農は、その豊富な土地基盤を背景に自給飼料生産の拡大がはかられましたが、高泌乳化と経営規模拡大に自給飼料の生産・供給が追いついていきませんでした。

  しかし、わが国の総人口は2005年以降減少ステージに入り、国際的な需給緩和や経済情勢も相俟って牛乳・乳製品の消費低迷が懸念されており、さらに、今後の国際情勢の変動や国内食料自給率、安全・安心な国産食品への関心など、今後の日本酪農には、これらに対応していくべき国際競争力の向上、地域産業の活性化と持続、食料自給率の向上、環境への対応など、多くの課題があります。

  国内の食料生産を拡大するための国産自給飼料生産の基盤強化とその生産性向上を実現するためには、実際の酪農生産者の理解と意欲とともに、酪農飼料基盤拡大推進事業、コントラクター支援事業、草地生産性対策事業等の充実が必須であり、今後は、生産コストと農畜産物の販売収入との差を直接払いの形で補填する施策化等、国家的かつ国民的支援も一層望まれます。

  これらの諸課題に対応し、これから経験するであろう難関を乗り越えて行くには、ご参集の方々をはじめ、すべての関係者が英知を結集して、実践し、解決していかなければなりません。

  本シンポジウムが将来の酪農発展のための一考の糧となり、現場における挑戦・実践を通して、大きな成果につながることを期待しております。

  特に、本年は丑年です。足元を踏みしめ、しっかりとした酪農基盤を築けれるよう一歩一歩、着実に前進して参りましょう。

以上