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No.9 平成19年度酪総研シンポジウム「乳製品貿易の拡大とわが国の酪農・乳業」韓国・嶺南大学校 教授 趙 錫辰

 只今ご紹介賜りました韓国の趙(チョウ)と申します。
今回私は、
・「韓国酪農の概況」について
・「UR交渉後の韓国乳製品市場の変化」について
・「韓米FTA交渉がもたらした韓国酪農への影響」について
・「国際化と韓国酪農の課題」について
という4つの項目についてお話いたします。

韓国酪農の概況
 まず、韓国酪農の概況について説明します。図1は韓国酪農の概況を示したものですが、1986年に4万3千戸ほどあった酪農家戸数は、非常に早いテンポで減少し、現在8千戸を下回る状況です。この原因は環境問題や後継者などもありますが、やはり乳製品自由化という厳しい環境に耐えられなくなり離農したというのが一番大きな原因だと思われます。一方、搾乳牛頭数をみると、1986年当時は20万頭ほどだったものが、1999年には約30万頭まで増加し、その後次第に低下している状況です。次に一頭当たり搾乳量をみると、1999年頃までは毎年2%程度、その後は3%程度の上昇率で伸び続けています。

図1 韓国酪農の概況(生産)

 図2は中国、韓国、台湾、日本における牛乳・乳製品消費の割合を示したものです。一般的に経済成長が進むほど飲用乳や粉乳の消費が減少し、チーズやヨーグルトの消費が増加すると言われています。そういった特徴から韓国をみれば、日本や台湾と比べても、まだ飲用乳の消費割合が高く、チーズの消費が少ないといった特徴がわかります。ちなみに韓国の国民一人当たりのチーズ消費量は1.4kgほどです。

図2 韓国酪農の概況(乳製品消費、2005年)

 図3は韓国の飲用乳消費を示したグラフです。白色牛乳の消費は、1970年代は年間24.1%の伸び率を示しました。それが1980年代に入ると年間18.0%の成長率。しかし1988年のソウルオリンピックをターニングポイントに停滞しはじめ、その後2000年の金融危機ではマイナス成長に向かい、以降は停滞ないし減少傾向が続いている状況です。しかしその反面、生乳基準価格は一度も下がったことがありません。このことについては、近年の飼料代の高騰を乳価に加えるべきだという意見や、消費の落込みを乳価に反映させるべきだなどの意見も出されているのが現状です。

図3 韓国酪農の概況(飲用牛乳消費,生乳基準価格)

 図4は、日本の農水省が世界の飲用乳価格(2005年11月)を調査したものに、韓国(ソウル)の飲用乳価格を付け加えたものです。これをみると飲用乳価格が一番高いのはシンガポール、次にソウル、東京と続きますが、近年の為替レートで換算するとソウルは200円を超えてしまいますから、世界で一番飲用乳価格が高い国といえます。

図4 世界主要都市の飲用乳価格(2005.11)

UR交渉後の韓国乳製品市場の変化
 それでは韓国の主な乳製品の関税率について説明します。まず韓国はすべて従価税であるに対して、日本は従価税と従量税の双方を使うことによって、効率良く関税障壁を築き、国内酪農を保護している仕組みです。しかも日本の関税は非常に細分化され、国内の事情に合わせて交渉したといえます。それに比べて韓国は高い関税率が維持できたものもあれば低い関税率のものもあり、交渉内容に統一感がみられない結果となっています。

 品目別にみると脱脂粉乳は176%と高関税ですが、ホエイは49.5%、ホエイ混合物は36%、バター89%、デイリースプレッド8%、チーズ36%の従価税となっています。ここで問題となるのがホエイ混合物とデイリースプレッドの関税率です。ホエイ混合物は脱脂粉乳の擬装乳製品として脱脂粉乳市場を乱す要因にもなっています。せっかく脱脂粉乳の関税率が高く維持されていても、ホエイ混合物が代替品となれば何も意味をなさなくなってしまいます。またバターの関税率は89%と高い関税率にみえますが、脱脂粉乳と同様、代替品としてデイリースプレッドがバター市場を混乱させています。このように韓国では脱脂粉乳、バター双方とも代替品によって市場が混乱している状況にあります(デイリースプレッドはUR交渉で54%の関税率が認められているものの、実際の実行税率は8%)。このように、韓国では代表的な乳製品である脱脂粉乳とバターは高関税を維持したものの、その代替品である、いわゆる擬装乳製品の関税障壁に失敗したため、韓国の国内乳製品市場は関税自由化に近い状況です。

 次にUR交渉によって需給関係がどのように推移したのかを見てみます(図5)。1995年のWTO体制がはじまる以前、国内の生乳生産と乳製品消費は、季節的変動はあるのものの比較的安定しており、ともに緊密な関係を保っていました。しかし1995年以降になると、まず、消費量と生乳生産量が乖離していきます。そして、その間に入り込んだのが輸入乳製品です。この消費と生乳生産の乖離、そして輸入乳製品の増加に伴って増加したのが国内乳製品の在庫量です。その在庫量は非常にブレが大きく、不安定な状況です。次に飲用牛乳の消費をみると、2003から2004年をピークに減少しているのですが、併せて国内の生乳生産も減少している状況をみれば、国内で生産される生乳の用途は飲用乳市場に限られていると言えます。
  将来、多くの酪農先進国と貿易交渉を締結するとすれば、1995年以降、韓国酪農が経験してきたような乳製品市場の変化が、もっと激しくあらわられるのではないかと懸念されるところです。

図5 UR交渉と乳製品市場の変化(月別需給推移)
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 図6はUR交渉後、1996年以降の乳製品輸入動向をグラフにしたものです。このグラフで一番大きな伸びを示しているのがチーズです。また、調整食料品(バター代替品)やホエイなど全般的に増加傾向にあります。そして、このグラフのなかの折れ線で示しているのは国内脱脂粉乳の在庫量ですが、この国内在庫量と密接な動きをしているのがホエイ混合物です。このホエイ混合物は、国内在庫の状況に敏感に反応しながら輸入されているという状況です。これは先ほど説明したとおり、国内の脱脂粉乳在庫と、その代替関係にあるホエイ混合物の輸入が密接な関係にあるということになります。

図6 UR交渉と市場の変化(乳製品の輸入動向)
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